国内の D2C(Direct to Consumer)ブランドは 2010 年代後半から伸長してきたが、Z 世代向けの新興勢は SNS(TikTok、Instagram、X)を主要な顧客獲得チャネルに据える点で、先行世代の D2C とは設計思想が異なる。
## 収益構造の特徴
日経 MJ の業界調査によれば、Z 世代 D2C の典型的な収益構造は次のとおりだ。第一に、EC 直販比率が 80% を超えるケースが多く、卸流通への依存度は低い。第二に、広告費比率は売上の 20〜30% 水準に達し、従来アパレルの 5〜10% を大きく上回る。第三に、原価率は商品カテゴリによるが、コスメで 30% 前後、アパレルで 40〜50% が目安とされる。
## TikTok と Instagram の役割
顧客獲得の起点は SNS だ。短尺動画(TikTok)での商品紹介、Instagram でのライフスタイル訴求、ライブコマースでの即時転換——この 3 段階を組み合わせた運用が標準化しつつある。
MarkeZine の業界動向レポート(2025)によれば、TikTok 経由の新規顧客獲得コスト(CPA)はブランドカテゴリ平均で 2,000〜4,000 円水準に上昇しており、2023 年比で 1.5〜2 倍水準にある。裏を返せば、ブランドのロイヤル化(LTV の伸長)がなければ、単純な広告投下の拡大は利益率を圧迫する。
## Shein・Temu との競合構造
中価格帯の国内 D2C が直面する最大のプレッシャーは、中国発の超低価格 EC だ。Shein と Temu は、原価・物流・広告を極限まで最適化したサプライチェーンで、若年層市場の下限価格帯を占拠している。
eMarketer のソーシャルコマースレポートでは、日本市場における Shein 浸透度は Z 世代の数十%に達するとされる。国内 D2C はブランドストーリーと品質で差別化するが、Z 世代の価格感度は高く、移行障壁は小さい。
## 持続可能性の論点
もっとも、国内 D2C の強みは商品開発の機動性と、日本市場の気候・体型・嗜好への密着性にある。規模拡大の臨界点を突破するには、オフライン展開(百貨店ポップアップ、路面店のフラッグシップ化)と、卸流通との戦略的協業が必要になる。広告投下の拡大だけで成長を買い続ける構造には、中期的な限界がある。
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