日本のセキュリティ・トークン・オファリング(STO)は、2019 年の金融商品取引法改正によって法的な足場が整った領域だ。金融庁公表の政令・内閣府令では、電子記録移転権利(2020 年 5 月施行)として、従来の有価証券と類似の規制体系に組み込まれている。
## 発行事例——不動産 ST が主戦場
三井住友信託銀行、野村證券、SBI 証券などが不動産 ST の発行を主導してきた。対象資産はホテル、住居用アパート、物流施設などで、信託受益権を小口化してブロックチェーン(Progmat など)上で管理する構造が一般的だ。
日本 STO 協会の公表資料によれば、発行件数は年々増加しており、不動産の種類(レジデンシャル、ホテル、物流)ごとに商品バリエーションが拡充されている。
## 米国 SEC との制度アプローチ差
電子記録移転権利は、原則として従来の有価証券と同等の開示・販売規制を適用する。
金融庁 電子記録移転権利等の取扱いに関する規則
米国 SEC の STO は、Reg D、Reg A+、Reg S などの既存の Exempt Offering 枠組みを活用する流れが主流だ。一方、日本の制度は「既存有価証券に準じる」設計で、発行者側のコンプライアンス負担は相対的に高い。裏を返せば、投資家保護のレベルは高く、機関投資家の取り込みには有利に働く構造だ。
## 流動性と 2 次流通
もっとも、STO 市場の本格普及には 2 次流通の厚みが欠かせない。PTS(私設取引システム)の制度整備と、機関投資家の売買ニーズ喚起が鍵となる。2024 年以降、大阪デジタル取引所などの新しい PTS が ST の取扱準備を進めている。
## 市場規模の読み方
STO の累計発行額は、業界調査では増加基調にあるが、絶対水準では米 STO 市場や伝統的な J-REIT 市場と比較すると小規模にとどまる。ST の経済合理性は、小口化による投資家層の拡大と、不動産の流動化コスト削減の 2 点に集中する。機関投資家マネーの厚みと、既存 J-REIT の代替ではなく補完としてのポジショニングが、中長期的な成長の条件となる。
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