Preferred Networks(PFN)は、東京大学松尾豊研究室出身の西川徹氏らが 2014 年に設立した深層学習スタートアップだ。創業期から研究所型の色彩が強く、論文投稿と実装の距離が短いことで知られる。会社公式の企業情報によれば、事業領域は深層学習、AI アクセラレータ、基盤モデル、ロボティクスにわたる。
## NVIDIA 依存をどう下げるか
PFN が独自設計の AI アクセラレータ MN-Core を発表したのは 2019 年である。会社の技術ドキュメントによれば、MN-Core は深層学習の行列演算に特化した設計で、電力効率の最適化に重点を置く。2023 年には後継の MN-Core 2 が公表された。
狙いは明白で、学習・推論に使う計算資源を外部 GPU に依存させすぎないことにある。ただし、業界全体で見れば NVIDIA の CUDA エコシステムの優位は揺るぎない。PFN の戦略は、NVIDIA を置き換えるのではなく、自社ワークロードの経済性を改善する一種の縦型統合と解釈した方が正確だろう。
## 大手事業会社を軸にした資本構造
PFN の株主構成は、国内大手事業会社が並ぶのが特徴だ。ファナック、トヨタ自動車、NTT、日立、三菱商事などが名前を連ねる。Crunchbase に集約された情報では、累計調達額は 200 億円超(公表ベース)で、シリコンバレー水準のディープテックと比較すると控えめだが、国内ディープテックとしては最上位クラスである。
株主構成の顔ぶれは、同社が純粋な VC 資金主導ではなく、事業会社との R&D 協業を前提に資本構造を組み立ててきたことを示唆する。ファナックとは製造業向け深層学習、トヨタとは自動運転、NTT とは言語モデル基盤と、個別事業に紐づいた形での共同開発が進行してきた。
## 黒字化への現実的な経路
もっとも、研究色の強い経営構造は継続的な資本投下を前提にしている。一方、AI 基盤モデルと MN-Core の商用化は、規模の経済が効き始めるまで時間を要する領域だ。東洋経済などの報道では、単体黒字化のタイミングは明示されていない。裏を返せば、事業会社株主との共同プロジェクトを長期に継続できる資本構造こそが、同社の競争優位そのものといえる。
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