日本の水素エネルギー政策は 2017 年に「水素基本戦略」として立ち上がり、2023 年 6 月に本格改訂された。経産省公表資料によれば、改訂版では 2040 年の水素供給目標を年間 1,200 万トン水準まで引き上げ、水電解装置の国内生産能力を 15 GW 規模まで拡大する方針を示している。
## トヨタ MIRAI の市場現実
FCEV(燃料電池車)の旗艦であるトヨタ MIRAI は、2014 年の初代発売以降、2020 年に第 2 世代へと切り替えられた。会社 IR によれば、累計販売台数は数万台規模で、BEV(電気自動車)市場と比較すると水素インフラの整備律速が明確だ。
ただし、トヨタは乗用 FCEV だけでなく、商用トラック・バス・定置燃料電池への展開を軸に据えている。水素のエネルギー密度は長距離重量輸送との相性が良く、乗用車より商用車のほうが技術経済性を発揮しやすい。
## 液化水素運搬船——川崎重工の実証
川崎重工の「すいそふろんてぃあ」は、世界初の液化水素運搬船として 2022 年に豪州–神戸間の実証運航を完了した。技術実証としては大きなマイルストーンだが、実証 1 隻から商用フリートへの移行には、液化・貯蔵インフラの大幅なコスト低下が前提となる。
## HySTRA と褐炭水素
HySTRA(日豪褐炭水素サプライチェーン)は、豪州の褐炭をガス化して水素を製造し、CCS(二酸化炭素回収貯留)と組合せて日本へ輸送する構想だ。一方で、これは本来のグリーン水素(再エネ電力を用いた水電解由来)とは異なるブルー水素・クリーン水素の範疇にある。
## 国際比較と政策課題
IEA の水素レビューでは、EU と米国(IRA 水素生産税額控除 45V)が製造段階の税制優遇で先行しており、日本のコスト競争力確保が当面の政策課題とされている。裏を返せば、供給目標の引き上げだけでは不十分で、需要側(鉄鋼、化学、発電)の水素利用設備投資補助が追加的に必要だ。2024 年以降、経産省の「水素社会推進法」と GX 経済移行債による長期支援枠組みが整備され、コスト差補填の仕組みが動き始めた段階にある。
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