日本の量子コンピューター開発は、ゲート式(汎用量子計算)と量子アニーリング式(最適化専用)の二系統に分かれて進んでいる。一つの国内プレーヤーが両方をカバーするのではなく、研究機関と事業会社の組み合わせで役割分担する構造が明確だ。
## ゲート式——富士通・理研・NTT
理化学研究所と富士通は、2023 年 10 月に国産初の超伝導方式 64 量子ビット計算機をクラウド公開した。理研公表資料によれば、これは国内で初めて外部ユーザーが利用できるゲート式量子コンピューターとなる。NTT も光量子コンピューターの研究を並行して進め、方式の多様性という点で国内勢は厚みを持つ。
## アニーリング式——NEC の位置
一方、量子アニーリングでは NEC が独自ポジションを築いている。D-Wave Systems(カナダ)の先行に対し、NEC はハイブリッド型アプローチで金融・物流の組合せ最適化の商用化に踏み込んでいる。汎用計算ではなく、特定業務の高速化に絞ることで導入障壁を下げる戦略だ。
## IBM・Google との規模差
もっとも、量子ビット数だけで比較すると、IBM は 2024 年時点で 1,000 量子ビット超の機体を発表しており、日本勢とは一桁の差がある。ただし、量子ビット数は質の代替指標にすぎない。誤り訂正(エラーコレクション)と量子ボリュームで測ると、差はさらに大きい。
## ムーンショット目標 6 の現実味
政府のムーンショット型研究開発目標 6 は「2050 年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」を掲げる。内閣府公表資料では、この目標は 3 段階のマイルストーン(2030/2040/2050)に分かれている。裏を返せば、2030 年時点でも完全な汎用実用化は想定されていない。短期的な商用価値は、特定ワークロード(材料計算、金融最適化、創薬スクリーニング)の限定的高速化に集中する見込みだ。
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